うんちく

『社名の由来』その7「ヤマト(株)」

 久しぶりに「社名の由来」について語ってみたいと思います。

今回は「アラビックヤマト」でおなじみの「ヤマト株式会社」です。

 昔、糊は保存が効かないため、自分で作るか、“糊売り”のいる番小屋で 使う分だけを買うという時代が続いていました。

1899年(明治32年)、 両国で薪炭商を営む木内弥吉氏は、炭を小分け販売する時の袋貼りに使う糊 がすぐ腐ってしまう事に困っていました。

木内氏は、糊が腐らないようにす る為、当時の識者の知識を集め、防腐剤の使用を考え、その刺激臭を消すた めに香料も入れました。

原料には精選された米の純粋澱粉を使い、湯煎に より熱を加え、均質の糊を造りました。

 これにより、腐らず、良い香りがして、固まらずに保存ができる糊ができ たわけです。

 これを大八車に乗せ、学校、会社、銀行、郵便局などへ販売を開始したの が「ヤマト糊」起業の原点です。

 社名の「ヤマト」は、日本一の糊にしたいという願いから「商売が大当た りしますように」という祈りを込め、丸的(まるまと)に当たり矢のマーク ―矢が的にあたる―を使用し、そのまま矢的(ヤマト)でヤマト糊工業(株) と命名されました。

 また、日本の旧国名(大和)にもかけた名前でもあります。

 当時は社名や商標に片仮名を採用する事は、画期的な事でした。

糊の原料は、米をはじめ、馬鈴薯、甘藷、とうもろこしなどの食料にもなる 澱粉で、昭和の始めから第二次世界大戦では澱粉がすべて統制となり、糊の 原料として使用できなくなりました。

そこで、彼岸花やダリヤなどの球根か ら澱粉を抽出し、従来の加熱(煮る)による製法から発想を変えて、加熱を しない科学的処理による非食品澱粉による強力で劣化しない澱粉糊製造法 “冷糊法”(れいこほう)を完成させました。

これらの糊は戦時中には風船 爆弾などにも使用されました。

戦後になり、1952年(昭和27)にチュ ーブ入り、1958年(昭和33年)にボトル型プラスチック容器が登場。

当時のガラス容器の重たい、割れるといったイメージを払拭し、プラスチッ ク容器使用の先駆けとなりました。

 液状糊の代名詞ともなっている「アラビックヤマト」が誕生したのは19 75年(昭和50年)で、それ以来、オフィス、家庭、学校用の糊が大きく 変わりました。

手を汚さず、使いやすいスポンジヘッドは発売当時は画期的 な商品として注目を集めました。

ヤマト(株)は、産業用の糊の開発も行い、 高い精度が要求される加工分野へ進出し、エレクトロニクス、原子力、自動 車関連、製紙、IT分野へと全世界へフィールドを広げています。

 また、最近では、「グラスデコ」「ペーパークイリング」、不思議なクレ ヨン「カラリックス」などホビー・クラフト分野にも進出し、工業用やオフ ィス用の糊ばかりでなく、パーソナルの分野へも進出しています。

 創業100年以上たった今、ヤマト(株)は、創業当時のままの社名とな っており、古さを感じさせない社名が使われています。

うんちくリスト

22 「平成生まれの文具」大年表
21 各社の社名の変遷
20 セミB5の「セミ」とは?
19 『世界に愛されるぺんてるが生んだ』“ぺんてるサインペン”“ボールPentel”
18 『社名の由来』その7「ヤマト(株)」
17 『文房具の歴史』その4【印鑑・インキ浸透印】
16 『文房具の歴史』その3【消しゴム】
15 『文房具の歴史』その2【糊「のり」】
14 「文房具の歴史」その1・シャープペンシル
13 「文房具」と「文具」の語源!?
12 鉛筆が六角形なのは何故?
11 CDは光っていない側が大切!
10 墨汁(ぼくじゅう)ってどうやって作る?
9 墨汁(ぼくじゅう)の歴史
8 ボールペンの「ふぅーん、なるほど」
7 ボールペンのインクのお話
6 社名の由来・その6「三菱鉛筆」
5 社名の由来・その5「ダイゴー」
4 社名の由来・その4「クツワ」
3 社名の由来・その3「ぺんてる」
2 社名の由来・その2「ヒサゴ」
1 社名の由来「コクヨ」